訪問サービスのおもしろさに開眼

僕は2019年の開業時にオープニングスタッフとして入職し、介護老人保健施設を経て、現在は「定期巡回」を担当するナーシング・ケアステーション梅ヶ丘で所属長を務めています。ここに転職するまでは複数の病院で看護師としてのキャリアを積んできたのですが、勤務先が立ち退きで突然閉院することになり転職を余儀なくされました。施設がオープンすることを転職サイトで知り、初めての福祉業界でしたが、人間関係をゼロから構築できるところに魅力を感じて飛び込んできました。転職の経緯が経緯なので、南東北グループが運営母体となっている世田谷区の施設というところにも惹かれました。

「定期巡回」というのは、利用者さんのお宅に1日に3〜4回（最大5回）伺って身体介護を提供する訪問サービスです。私を含む看護師2人と介護職4人の計6人で30人の利用者さんに対応しています。対象は、褥瘡ケアや胃ろうケアなどの医療処置を必要とする介護度の高い方が中心。移動は悪天候でなければ電動自転車です。通常の巡回以外でも何かあった時は駆けつける体制を取っているので、雪でも台風でも関係ないのは大変は大変です。これまでずっと内勤でしたし、外に出る機会といえば研修ぐらいしか無かったので、「定期巡回を担当してほしい」と言われたときは自分にできるのか想像もつきませんでした。でも一度外に出てみたら「こんな世界があるんだ！」と訪問サービスのおもしろさに開眼しました。

例えばある胃ろうの利用者さんは、在宅介護にはなったものの「現状維持が精一杯だろう」と最初は思われていました。でも定期巡回を利用しながら訪問リハビリテーションを受けるうちに、徐々に歩けるようになり、トイレでの自立排泄ができるようになり、喋れるようになり、口から食べられるようになりと、ADLがどんどん向上していって僕らのサービスがついに要らなくなったんです。

明るい気持ちになれればなんとかなる

要介護度5だった方がそこまで回復したのはこの仕事をしていて初めての経験でした。やりがいを実感したのはもちろんですが、寝たきりだった方のADLが目に見えて上がっていき、良い意味でのサービス終了を迎えるというのは何より楽しかったです。異動の話を最初に振られた時は正直不安でしたが、周りの支えのおかげで今があると思っています。1年前からは所属長になったので、スタッフの状況を把握してシフトを組むのがまた大変なんです。でも僕が困っているとスタッフは快く応じてくれるし、僕もスタッフが困っていたら「何かやることない？」と言ってあげたい性分です。ベースにそういう人間関係があるから、新しいことにどんどんチャレンジできるんだと思います。

僕が働く場所に一番求めるのは人間関係です。勤めていた病院が突然閉院することになって転職先を探していたとき、ここはオープニングスタッフとしての採用だったので、みんなが一緒のスタートラインに立てるのがいいなと思って応募しました。格差が無くて平等な人間関係の中で仕事をするチャンスだと思いました。他の職種の方でも事務の方でも、見知った職員同士がちょっとした言葉を交わし合うのがここでは日常の光景です。当たり前の挨拶でも、「お疲れ様です」「お先です」とみんなから笑顔で声をかけてもらえるだけで励みになります。働きやすさって結局そういうことだと思うんです。この施設のそういう感じが僕は好きです。新しいことにチャレンジしようとすると超えなければいけないハードルもたくさんありますが、人間関係の根底に助け合う精神があればなんとかなる。明るい気持ちになれればなんとかなる。そう思います。